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東南アジア、南アジアを中心とする世界各国における、海外市場、マーケティング調査|Research Asian Information rain

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エッセイ: 東南アジアビジネスを円滑に進めるための情報収集のコツと留意点

東南アジアは6億人近い域内人口、高い経済成長率、親日度合などから脚光を浴びており、日本企業の投資先、海外進出先として今真っ先に候補に挙がる地域ではないでしょうか。しかし、実際には東南アジアと一言に言っても、その加盟10か国の中には2億4千万人以上の人口を抱えるインドネシアと41万人のブルネイ、1人当たりGDPが日本より高く46,000ドルを越えるシンガポールと、900ドルに満たないミャンマー、海のないラオスや1万以上の島があるインドネシア、仏教信者の多いタイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、イスラム教信者の多いインドネシア、ブルネイ、マレーシア、キリスト教信者が多いフィリピンなど、どのような切り口から見てもバラエティーに富み、とても一括りに理解できる地域ではないことがお分かりいただけるかと思います。東南アジア進出を考えるときにも、その目的により、どの国・地域がふさわしいかということは、慎重に調べる必要が出てきます。

今回は、東南アジアビジネスを円滑に進めるための情報収集にはどのようなソースがあり、どのように注意したらよいかといった点について、日々東南アジアビジネスのための市場調査を行っている弊社の経験からお伝えします。

まず、必ず押さえたいのが統計データです。国の人口規模や人口構成、産業構造、賃金レベル、可処分所得など、様々なことが分かります。JETROや外務省など、日本政府や政府系機関による「日本語の」情報も昨今相当程度インターネット上にまとまっていますので、まずはこうしたデータを検索して見つけ、だいたいの市場感をつかむことが大切です。

大まかな情報はこうした「日本語の」データでもわかることが多いのですが、詳細を知りたいと思ったときには不十分です。こうしたときには、基本的に英語になってしまいますが、まず、横比較をするときには国際機関のデータベースが有用です。国連は世界の人口データを更新していますし、UNDPやIMFは経済統計、FAOなどは食糧系の統計、WHOは疾病系のデータなどを持っています。こうした国際機関のデータは、データベース上で同じ条件で複数の国のデータを抽出することができることや、特に人口データなどは2050年など、かなり遠い将来の予測値まで発表していることから、使い勝手が良いかもしれません。

こうしたデータで東南アジア各国の横比較をして、詳しくある国について知りたくなった時には、今度は各国政府の「統計局」が発行している公式のデータベースを参照することをおすすめします。

昔はその国の図書館などに出向いて冊子の分厚い統計書を紐解かなければいけませんでしたが、今はたいていの国でインターネット上にデータが公開されており、直近のデータがダウンロードできるようになっています。例えば、フィリピン統計局では、島でわかれている行政区分ごとの細かな人口データ、所得データなどが入手できます(図参照)。

こうした数値からの各国事情の把握は大変重要ですが、留意点もあります。東南アジア各国では近年かなりこうした統計データの重要性が認識され、整備も進んできましたが、まだまだデータの信ぴょう性に疑問が残る国も多いのが実情です。また、ある程度信ぴょう性があったとしてもそのデータが何を示しているかについては思いを馳せなければなりません。例えば、「ジャカルタの人口」を知りたいと思ったときに、それが行政区分上の人口になっており、実際には東京の市場規模を知るときに東京だけではなく同じ商圏として首都近郊の各県を考慮に入れなくてはならないのと同様に、いわゆる「グレータージャカルタ」として通勤圏内の人口規模を把握する必要があるのです。また、「収入」を把握したいと思ったときには、東南アジアでは主たる収入のほかに副業など、その他の雑収入が多く、政府統計に表れてくる(あるいはアンケート調査をしたときに答えに上がる)収入を鵜呑みにすることは危険であるということも挙げられます。こうした限界点を和らげる措置としては、「支出」を見るということも重要です。収入はブラックボックスであっても、支出は本当に使う分が出てくるため、統計データにおいても、アンケート調査においても、支出を見ることはその所得者層の実態を把握するためには有用となります。収入がらみでもう1点言うと、「1人当たり平均所得」は時と場合によってはあまり意味がないばかりか、それを念頭に商品設計や価格設定を考えることは危険です。通常、最初の市場として意識されるのはその国の首都圏だと思われますが、その首都圏の所得とそれ以外の全国平均とは日本からは想像できないほどかけ離れている場合が多いのです。このため、市場として(あるいは生産地として)考えている地域で、その所得規模や賃金体系などを見る必要があります。

このようにして、各国の経済情勢を「数字」でつかんだ後は、「定性的な」最新情報を入手したいものです。日本のニュースでも最近東南アジア関係の記事を見ない日はないくらいになっていますが、それでも日本のメディアのみで情報収集しているのでは限界があります。通常、どこに国のも英字新聞が存在し、それぞれの英字新聞各社がニュースホームページを持っていますので、そこで最新ニュースの細かい情報が入手できます。

「英語での情報収集は面倒だし、時間がない」という方も多いと思いますが、そんな時に役に立つのは「日本語の現地発の情報」です。親日の国であり、日本人の在住者も多いため、それぞれの国で日本語の情報誌、ニュース紙などが発行されています。有料のものもありますが、多くは無料で入手が可能です(日本での入手は少々困難ですが、現地では日本人の多いエリアで無料配布しています。また、ウェブサイトから情報を集められる場合も多いです)。こうしたニュースソースに日々あたることで、例えば、日本ではニュースにならない程度のクーデター関連の小競合いや、爆弾騒ぎ、独自の視点でのニュース解説など、細かなニュースがタイムリーに入手できるため、出張前の安全確認などには欠かせません。気になる地域についてはこうしたサイトをまめにチェックしておくと、その国の今が肌感覚でわかるようになってくると思います。

このようにして、進出に関心を持っている国の情報をたくさん入手した後はいよいよ現地に赴くことになると思いますが、東南アジア地域の調査を20年近く手掛けた経験から少々申し上げるとすれば「事前の情報収集は念入りに、細かく、しかし現地に入ったらすべて頭をからっぽにして、見たまま、聞いたままを感じて直感を大切にする」ことに尽きるかと思います。いくら情報を入手したところで、日々移り変わる東南アジアの今を切り取るには、こうした姿勢がおすすめです。